第6話「ジョーカーのお誘い」
「うう……ここは……」
……頭が痛い。ガツンと殴られたような痛みの中で私は意識を取り戻した。
ここは街の裏路地だろうか。
「や、気がついた?」
私の目の前に、指の長い手が差し伸べられる。
「……誰?」
「いや、僕は今たまたま通りかかっただけだ。でも女の子が倒れてたら、フツー心配するよ。大丈夫?」
奇抜な格好の男の子だった。帽子におかっぱ頭を揺らして、私の顔をのぞきこむ。
「……ありがと」
私は、ぼんやりしたまま、男の子の手をとった。
その手は冷たくて、まるで……死んだ人の手みたいだ。
でも、私の手をとる仕草はどこか優しかった。
「ごめん、驚いた?でも、さっきは僕のほうが驚いたんだよ?道に女の子が落ちてるなんて。あ、立てる?」
少年はにこにこして、私の手をとった。
……よ、よく考えたら、私……久しぶりに男の人に触れたかも。
「どうしたの?異性に触れたのは久しぶり?」
「……そ、そんなことっ!!」
図星を突かれたけど、つっかかる元気がない。
それより私、さっきまでスピリタス隊の皆と悪魔を祓ってたのに……どうして、ここにいるんだろう?
その時。
もう一人、針頭の少年が現れた。
「おい、ジョーカー。オレの獲物を横取りするのか?」
ムスッとした表情。2人は仲間らしい。
「獲物……横取り?ジード、僕に言わせれば、女の子には、最初に声をかけた者勝ちだ。力づくで奪っても女の子から嫌われるだけだよ?」
ジョーカーと呼ばれた男の子は、私の手をとった。
「ちょっと場所を変えよう。アイツ後でうるさいし。」
「汚ねえぞ……このヤロ!!」」
やがて、視界から針頭の少年の姿が消えた。
……………………………………………………
「さて、邪魔者も消えたし……とりあえず座ろうか。」
「ちょっと待って!?一体、どういうつもり?」
■Next (2/4)