「おちついて水鏡。気持ちはわかりますが、今回貴方は、マリアに救われた。今はマリアに感謝すべきですよ」
エフレム神父は、切迫した表情の水鏡を諭した。
(違う……私は今まで一度も、悪魔祓いに失敗したことはなかった。今日だって、マリアや、あの悪魔の存在が気にならなければ……!)
水鏡は、納得できずにこぼれた想いをかみ殺した。
その時。
「その女をこちらにもらおう。」
上空から新たな悪魔の声がした。
「誰だ……っ!?」
スピリタス隊のメンバーが、周囲を警戒する。しかし、どの方位にも悪魔の気配はない。
「この女からは、生贄の匂いがする……それが悪魔を呼び寄せる。共に行動すれば、貴様らが命を落とすぞ……」
バリィィン、と窓ガラスが割れた。
と同時に黒い腕がマリアをつかみ、そのまま夜の闇へと連れ去った。
「マリア……!!」
エフレム神父が、驚いて目を見張る。しかしすでに、窓の外にマリアの姿はなかった。
「くそっ!一瞬の油断を突かれるとは……!」
宗像は、腰のサーベルを握り、窓から外へと飛び出す。
雲行きは突然怪しくなり、陽の落ちた街に強い風が吹き始めた。