歓迎会が終わると、私は自分の部屋に戻った。
寂しいけど、この一人の空間が、今一番安心できる場所。
ふと足元を見ると、一枚の手紙が落ちていた。
「あら……何かしら?」
扉の隙間から落ちたのだろう。
何か、短い手紙のようだ。
私はそれを拾いあげた。
「話がある。今夜2時、学校西側の温室に来い。」
手紙にはそれだけ書かれていた。
書いた人間の名前はない。
文字も、プリントアウトされたものだ。
「何、これ……?」
「どうした、マリア?」
小さなぬいぐるみのウルルが、手紙をのぞきこんだ。
「なんでもないわ。」
「そんなわけないだろ。見せろ。」
「わ……やめて!」
ウルルは、私が後ろ手に隠した手紙を取り上げた。
「なるほど。失礼な呼び出しだな。行くのか?」
ざわざわと木々が揺れ、湿った風が窓をたたく。
「行かないわ。怪しい誘いに乗るのは軽率だもの。そもそも寮の門限はの夜の8時だし。今日は寝るわ。」
「ふん、つまらない女だ。行けば面白い悪魔が居るかもしれないのに。悪魔を狩るのは、お前の仕事だろう?」
「ヘンなこと言わないで。おとなしくしてて。」
私はベッドに腰を下した……その時。
コン、と窓ガラスに何かが当たった。小石を投げたような音だ。
「誰……?」
ベッドから起きて窓を開けても、誰もいない。私は、出かける用意を始めると、ウルルを呼んだ。
「ウルル。やっぱり一緒に来てちょうだい。」
「……気が変わったのか?」
「そうね。もしだけど、手紙の犯人がすでに学校の中にいるなら、危険だし……学校は私の家と同じだもの。」
「……そう来ないとな!」
私は、2階の部屋の窓から、そろりと飛び降りた。
幸い、私の部屋の真下は空き部屋だし、他の寮生には気づかれにくい。
トン、と地面に降り立つと、私はガラスの温室へ駆けていく。
今の時刻は、夜中の1時50分……呼び出し時刻は2時だから、予告の時刻まであと10分。
私は、誰もいない温室の扉を開けた。無用心にも、鍵はかかっていない。キィ、響いて扉が開く。
しかし……
「誰も……いない?」
私は、注意深く辺りをうかがった。
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