「あー、めずらしく頭使ったからお腹すいた!マリア、遠慮しないで食べなよー?」

「あ、うん……」

 キリトは、食事の時間にはイキイキしている。

「マリア。水鏡さんは、料理すごくうまいんだ。これなら男で生涯独身でもイケるよ。」

「キリト、もう少し他の言葉で褒めてください。」
 水鏡さんが苦笑しながら、声をかけてくれる。

「マリア、遠くの国に来て心細いでしょうけど……私たちを家族だと思って、何でも話してくださいね。」

「ありがとうございます。」

「じゃ宗像、ケーキ切り分けてください。マリアの分を、一番大きくお願いしますよ?」

「あー、わかってる。」
 水鏡さんに包丁を渡されて、宗像さんがケーキと、パンを切り分け、各々の皿に乗せた。

 一つのパンを皆で切り分けることを、修道生活ではとても大切にする。

 それで私たちは、家族のように近い存在になることができるんだって。

「……どうした、日和?食べないのか?」
 食事中、ふと、宗像さんが手をとめた。

「……ええ。今日は少し体調が悪くて……」
「大丈夫か?」

「ええ。できれば今日は、少し早めに休みたいのですが……」
 見ると、日和は全く食事に手をつけていない。

 エフレム神父が日和を気遣って声をかけた。
「日和、具合が悪いなら構いませんが、今日はマリアの歓迎会ですし。休む前にマリアに一言かけてあげてくださいね。」

「ああ……」

 日和は私に向かって、少し笑った。
「これからよろしく、マリア。おやすみ。」

「こちらこそ、よろしく。」

「日和、ケーキ食べとくから、心配すんなよー」

 キリトは、日和の分のケーキにもう手をつけていた。




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