「このまま、地獄の塵に変えてやる。相手が悪かったと後悔するんだな。」

「く……ッ、貴様、人間のを助ければ天使に戻れるとでも思っているのか?」

「黙れ……下衆が!」
 ウリエルは、力を込めて喉を絞める。

「う、ああ……サタンへの……反逆だぞ、貴様……わあああ……ッ!!」

  叫び声を残して、極彩色の悪魔は散った。

 リストランテの前の窓ガラスや、大通りの歩道に、その破片が残った。

  この後、祈祷をしなければ魔の破片はここに残り続け、土地を汚すだろう……そう思ってふと見ると、包丁の女性は警官に保護されていた。

「ああ……もう、駄目……」
 私の緊張が解けて、倒れそうになった、その時。

「この程度で気を失うとは……情けないな。」
ウリエルの腕が私を抱きとめていた。

「ウリエル……まだ私の仕事、終わってない。ロージ神父を病院に……あと荷物も……」

「無理だな。まあ、お前はよくやった。つかの間の安息に浸るがいい。」

 ウリエルは私の前から消えた。周囲にはパトカーが集まり、警官たちが現場を調べていた。

 しかし私の姿を見ると皆一様に、おびえた表情で目をそむけた。

 街のショーウインドウには、花模様の可愛いワンピースや、白いピンヒールが飾られて華やかだった。

 でもガラスケースに映るのは、全身血染めの少女……そう、それが今の私の姿。

 返り血を浴びて、髪も肌も赤く染まっている。
 
  ……そんな自分の姿に愕然とする。




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