「我が僕、ウリエルに命じる……彼女を苦しめる悪を地獄の底へ連れ戻せ……!」
私の背後から、黒い煙が立ち昇る。
……もちろんこれは、他の人には見えない。
ウリエルが私を主と認め、その範囲内を結界としている証だ。これが、ウリエルと私の領域。
決して他の悪魔が、立ち入ることのできない領域だ。
「ウリエル、彼女に祝福を……!!」
「祝福?何度言ったら分かる。オレは悪魔だ。他の悪魔を地獄に送り返すだけだ。」
「ふん……人間の手下になりさがった悪魔か。くだらん。」
包丁の女性にとりついた悪魔は、ウリエルを挑発する。
「そこの野良悪魔。その女から剥がしてやる……」
「お前の主人気取りの小娘、オレが汚されたいか?」
「……消えろ。」
ウリエルの手が女性の顔をぐわしと掴み、激しく揺さぶった。
「うううう……うあああああああ……!!」
叫び声ともに、おぞましくも極彩色の塗料のような悪魔の影が、彼女の口から流出した。
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