「マリア。覚悟はいいな?」

「……はい。」

 バチン!

 と大きな音をたてて、宗像さんが私の頬を打った。

「う……!」
 私は目を見開いて、頬を押さえた。打たれたところが、じんじんと痛む。

「い、痛いですよ!」


「宗像、そこまでしなくても……マリアだって、辛い思いをしたはずです!」
 水鏡さんが宗像さんに抗議する。

「痛くて当然だ。これで目が覚めたか、馬鹿者。」

「あの……宗像さん、私は……!!」




 その時。

「つまらない誘惑に負けやがって。今夜は反省会をしながら、周囲を交代で警戒する。悪魔の力を再び使われたら危ないからな。水鏡、マリアにスープを温めなおしてやれ。」

「……はい!」


 宗像さんは寮に戻った。決して優しい口調ではなかったけど……力強く先頭に立って、“戻るぞ”と言ってくれた宗像さんに、私は感謝しつつ、寮に向って駆けだした。

 この後、私は宗像さんや水鏡さんに、こってり絞られるのだろう。



 今日はまだしばらく、眠れない夜が続きそうだ。

 でも皆、こんなことがあっても、まだ私を信じてくれている。


 これは嵐の前の、つかの間の平穏かもしれない……だけど、私は共に暮らす仲間との大切な絆を護るため、寮の玄関の鍵を固くかけたのだった。





■The END


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