「僕の契約した悪魔の能力を使っても、女の子の心だけは思い通りにできないんだよね。じゃ、またね?」

 ジョーカーは手を振った。


……………………………………………………



 気付くと私は一人、白百合寮の廊下に居た。

「ここ……寮の中だわ。どうして……」

  何時の間に戻ったのか、自分でもわからない。

 まるで夢の中にでもいたみたいだ。

「マリア……貴方、いつ、戻ってたんですか!?ずっと探していたんですよ!?電話の一本でもあれば……」

「水鏡さん……すみません、心配をかけて!」

「とにかく無事で良かった……本当に、心配させて!」
 私の肩に乗せられた、水鏡さんの手は温かかった。

 ふっくらと温かな、これが、生きている人間の体温。

 私は水鏡さんのお説教をぼんやりと聴きながら、無事に帰ってきたことに安堵した。

 なのに……ジョーカーの冷たい手と寂しそうな笑顔が、目の前にチラついた。


 あの時、少しでも笑えばよかったのかな。

 そういえば、と思って携帯を開くと、いつの間に操作したのか、新しい電話番号が登録してあった。


「JOKER(ジョーカー)」の名前で。





■第7話「卑怯者の思惑」
へ続く


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