「宗像さん……?」

「それに、これでは風邪を引くだろう。健康管理もできないようなヤツは、仲間には入れられない」
 そう言って、宗像さんは私に傘を差し出した。

「あの……学園内で私と同じ傘に入ったら、宗像さんが悪く言われちゃいますよ?」

「いや、それは……」
 少したじろく宗像さん。

「それに、エクソシスト隊の皆は男の子だから、女の子と仲良くしちゃ、いけないんですよね?」

「いや、別に、そういうわけでは……」

「大丈夫です。もう、学園内で悪魔の姿は見せないように気をつけます。だから、先に寮に戻ってください。私もすぐに戻りま……」

「ええい、面倒な女だな!!」
 宗像さんの手が私の手首を掴んで、傘の中に入れた。

「いいから、とっとと戻れ!!」
「は、はい……!!」


 私は無理やり宗像さんに手首を引っ張られて、寮に連れ戻される。

 宗像さんの手は人間の、血の通った温かい手をしていた。


「あーあー!! 女の子に触れたらダメだって言ったの、宗像さんじゃないですか! それを……卑怯ですよ!」

 寮に戻った私たちが、そのまま玄関をくぐると、キリトが横目でじっとりと私たちを見た。

 宗像さんを見て、キリトが不満そうにわめき散らす。

「オレは、別にそういうつもりじゃ……!!」
 宗像さんは掴んでいた私の手首をバッと離した。

 それを横目で見ていたキリトは、にっと笑って尋ねる。

「じゃ、これからマリアの歓迎会してもいいですか?」
「勝手にしろ!」

「じゃ、スピリタス隊のメンバー、集めてきますね!」

 それが、エクソシスト隊の名前なのだろう。

 キリトが意気ようようと部屋を飛び出すと……入れ違いに一人の少年が現れた。

「やあ。この女の子が、悪魔憑きのエクソシスト?」
 柔らかな金髪を揺らす男の子は、私に向かって手を伸ばした。

(この金髪の子は、さっき会ったばかりの……)
 そう思った瞬間、その少年は私に笑顔を向けた。


「はじめまして。僕が君の悪魔を祓ってあげようか?」



■4話 「私は天使でも悪魔でもないから」へ続く


TOP

karinEntertainment2009