その時。ざわり……窓の外の木々が、不穏に揺れた。

 車のクラクションが不自然に重なって鳴り響く。

 ジジジジジ……!!
 飛んできたセミが勢いよく窓ガラスにぶつかり、落下する。

「……何?」
 私がつぶやくと、ヴン……とか細い音をたてて、部屋の明かりが消えた。

 闇の狭間から聞こえる声。

「マリア……おい、何をしている……」

(この感じは、ウリエル?でも私、まだ彼を召還していないわ……?)

 私はベッドの上に外したロザリオに手をのばした。

 今、私の指から流した、たった1滴の血の匂いに触発されたのだろうか。

 しかし、こんな初めての場所で、いきなりウリエルを呼び出すわけにはいかない。

 ここは学園の生徒たちが生活する場所だ……いくら寮の私の部屋の中だからといって、この平和な聖バルビナ学園の中に、悪魔を出現させるわけにはいかない。

(まずい……ウリエルの気配を封じなきゃ……!)
 私はロザリオに手を伸ばして掴み、カバンから聖水を取り出そうとした……その瞬間。

 ドクン。

 心臓が高鳴る。
 悪魔ウリエルの力は強力だ。

 私一人の力では、とても押さえられない。

「マリア……お前の身の上を隠して、ここに滞在するつもりか?」
「ウリエル!!」

 ガシャン……!!
 悪魔ウリエルが、急に実体化し、翼を広げた瞬間に、部屋の窓ガラスを派手に割った。

 ……その時、足早にこの部屋に向かってくる男の足音が近づいて来た。




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